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2022.03.25

個人事業主の自動車保険や健康保険や生命保険、保険料で経費に計上できるものは何?

個人事業主の自動車保険や健康保険や生命保険、保険料で経費に計上できるものは何?

 

個人事業主は、自動車保険/生命保険/地震保険をはじめとする多種多様な保険料を支払っています。しかし、「自家用車を事業でも使用している」「地震保険を掛けているオフィスは自宅も兼ねている」という個人事業主も多く、事業とプライベートの支出が曖昧になりがちです。

 

もし本来経費として計上できない出費まで経費扱いにしてしまった場合、「申告漏れ」「所得隠し」「脱税」を意図して行ったと判断されてしまい、ペナルティとして加算税を課税されてしまいます。

 

この記事では、経費計上できる個人事業主の保険料について解説していきます。正しく経費計上するためにも、事業とプライベートの支出をきちんと区別しましょう。

個人事業主が経費に計上できる保険料

個人事業主が経費に計上できる保険料

経費として計上できる保険料は、事業の運営に必須か否かで判断されます。ただし、自宅と職場が兼用になっている場合や、仕事とプライベートで同じ車を使用している場合、全額を計上できるわけではありません。

 

事業運営に関わっている部分のみが対象となっているので、保険料を計上する際には十分注意するようにしましょう。

火災保険料

事業を行っている店舗やオフィスの火災保険料は、経費として認められます。もし事業地と自宅が同じ場合、事業に関連する経費とプライベートの支出を分ける家事按分を行わなければなりません。

 

プライベートで使用する自宅部分は経費扱いされないものの、店舗やオフィス部分となっている建物部分の火災保険料は経費となります。

地震保険料

地震保険料で経費計上できるのは、原則として事業で使用している建物部分です。ただし、平成19年1月に大幅な税制改正が行われました。それにより、自宅と個人事業地が同じ場合、自宅部分の地震保険料も一定額が計上対象となりました。

自動車保険料

自動車を事業用に所有している場合、自動車保険料を経費として計上できます。ただし、プライベートの自家用車を事業で使う際は、家事按分しなければなりません。

経費計上の対象となるのは、事業での使用回数や走行距離を基に算出された分のみです。尚、自動車保険料には自賠責保険と任意保険があり、各保険で勘定項目が異なる点もポイントです。

自賠責保険

自賠責保険は、全自動車に加入義務がある保険です。経費計上する際の勘定項目は、「損害保険料」もしくは「車両費」となります。尚、もし1年以上分の自賠責保険料を一括で支払った場合、支払いを行った年に全額計上できるという特徴があります。

任意保険

任意保険は、その名の通り任意で掛ける自動車保険料です。任意保険料を経費として計上する場合、勘定科目は契約期間によって異なります。1年以内の契約期間で使われる勘定科目は、「損害保険料」もしくは「車両費」です。

 

しかし、1年以上の契約期間で任意保険料を支払う場合は「長期前払い費用」となり、期間ごとの配分額を「損害保険料」や「車両費」とします。「長期前払い費用」の按分は毎年必要なため、忘れないよう注意しましょう。

従業員の生命保険料

個人事業主が従業員を雇う場合、従業員の生命保険料を経費として計上することが可能です。会社や個人事業主が従業員のために支払う生命保険料は、福利厚生費に分類されます。

 

福利厚生費とは、従業員が働きやすい生活環境を作るために雇用主側が支払った費用のことを指し、経費として計上できるという特徴があります。

ただし、従業員への出費が全て福利厚生費になるわけではなく、給料は対象外となるほか、状況や条件に応じて福利厚生費になるか否かが決まります。

 

生命保険料の場合は、従業員の生活環境を安定及び向上させるという目的に当てはまることから、福利厚生費として扱われます。そのため、支払った生命保険料を必要経費として計上できるのです。

個人事業主が経費に計上できない保険料

個人事業主が経費に計上できない保険料

事業への関連性が認められない保険料は、経費扱いされません。しかし、経費として計上できない保険料であっても、各種控除の利用で課税所得を減額させることができます。

結果として個人事業の節税対策に繋がるため、所得控除の対象になるか否かを確認する必要があります。では、個人事業主が経費として計上できない保険料を見ていきましょう。

自身の生命保険料

経費の計上ができない保険料のひとつに、個人事業主自身の生命保険料が挙げられます。

個人事業主の生命保険は、会社に属する従業員ではなく個人に掛ける保険です。プライベートで掛けている生命保険と同等に見なされることから、事業運営に必要な経費として計上できない仕組みになっています。

しかし、個人事業主の生命保険料は、所得控除の適用対象です。「生命保険料控除」を受けられることから、節税できるというメリットがあります。

法人化していれば生命保険は経費にできる

通常、個人事業主自身の生命保険料は、必要経費に該当しません。しかし、事業を法人化することで、生命保険料を経費にできることがあります。生命保険料を経費として計上するには、いくつかの条件を揃える必要があります。

まず、社長の生命保険料を支払う保険契約者が法人であるということです。そして、保険料の受取人は、法人か役員をしている遺族である必要があります。この2つの条件を満たすことで、生命保険の種類によっては経費計上が可能です。

ただし、保険料の受取人が役員である遺族のみの場合、受け取った保険料に所得税が加算される仕組みになっています。法人化して生命保険料を経費計上する際は、加入する生命保険の種類や契約内容をよく確認しましょう。

自身の地震保険料、火災保険料

事業で使用する建物の地震保険料や火災保険料は、必要経費として扱われます。一方で、個人事業主がプライベートで地震保険や火災保険を掛けている場合は、支払った掛け金を経費に加えてはいけません。

ただし、事業に直接関連のない地震保険料は「地震保険料控除」として所得控除を受けることができます。1月から12月までの1年間に支払った保険料の一定額が控除対象となるため、確定申告の際は忘れずに申請しましょう。

自身の国民健康保険料

個人事業主が自分自身のために支払った国民健康保険料は、プライベートの支出として扱われます。事業に直接関わりのある出費と見なされないことから、経費計上の対象外です。

ただし、個人事業主の国民健康保険料には「社会保険料控除」が適用され、個人事業主に扶養家族がいる場合は「扶養控除」を受けることができます。

経費としての計上はできませんが、「社会保険料控除」や「扶養控除」をうまく活用することで、節税効果を高めることが可能です。

介護保険料

介護保険料は、高齢者の介護に必要な費用を支えるための支援制度です。40歳以上から支払う義務があり、65歳未満か否かで支払い方法が異なるという特徴があります。

個人事業主の介護保険料は、必要経費として計上することができません。しかし、「社会保険料控除」に該当することから、確定申告時に控除を受けることが可能です。

「社会保険料控除」を活用する場合、1月から12月までに支払った保険料の全額を申告することができます。

国民年金

日本の年金制度には、国民年金、厚生年金、私的年金があります。3つの年金制度の中で、個人事業主も必ず支払うのが国民年金です。国民年金とは、日本に在住する20歳から60歳未満の方全員に加入義務がある公的年金のことを指します。

個人事業主か否かにかかわらず支払い義務が発生するため、国民年金を必要経費として計上することはできません。ただし、「社会保険料控除」の対象となることから、確定申告時に全額を控除することが可能です。

小規模共済掛金

小規模共済掛金は、個人事業主の退職金としての役割を果たす制度です。個人事業主が廃業・退職した場合に備えて、事前に資金を積み立てるという仕組みになっています。小規模共済掛金の掛け金は、1,000円から7万円の範囲内で自由に選択可能です。

必要経費という扱いにはならないものの、確定申告の際には「小規模企業共済等掛金控除」の対象となります。小規模共済掛金で支払った額の最大120%が戻ることから、節税対策に大きな効果をもたらします。

経費になる場合とならない場合の税金の差を計算

経費になる場合とならない場合の税金の差を計算

個人事業主が支払う保険料は、多種多様です。その中には、必要経費になる保険料もあれば、そうでないものも含まれています。ここでは地震保険料を例にして、保険料が経費になる場合とならない場合の税金額の違いを見ていきます。

保険料が経費になる場合の税金の計算

個人事業主が支払った地震保険料を経費として計上する場合、以下2つの手順で納税額を算出できます。

 

①    所得税の対象となる利益の出し方

利益-支払った地震保険料

 

②    所得税として納める金額の出し方

課税所得×所得税率

 

ここでは、個人事業の利益が500万円、支払った地震保険料が10万円、所得税率を20%とした場合の納税すべき金額を見ていきます。尚、所得税率は所得金額により変動するため、自身の事業がどれに該当するかを確認しましょう。今回の事例で支払うべき所得税は、以下の計算で導き出します。

 

所得税の対象となる利益:500万円-10万円=490万円

所得税として納める金額:490万円×20%=98万円

 

よって、今回のケースで個人事業主が支払うべき納税額は、98万円となります。

保険料が経費ではなく控除の場合の税金の計算

個人事業主が「地震保険料控除」を受ける場合、支払うべき税金は以下の方法で算出します。

 

①    所得税の対象となる利益の出し方

経費にならない地震保険料では、利益を据え置きします。

 

②    「地震保険料控除」の計算方法

地震保険料の控除額は、以下のようになっています。

 

1年間に支払った地震保険料

控除額

5万円以下

支払った保険料の全額

5万円以上

一律5万円

 

③    課税所得の計算方法

利益-地震保険料控除額

 

④    所得税として納める金額の出し方

課税所得×所得税率

 

では、個人事業の利益が500万円、支払った地震保険料が10万円、所得税率を20%とした場合の納税額を見ていきましょう。

 

所得税の対象となる利益:500万円

「地震保険料控除」:地震保険料10万円の控除額5万円

課税所得:500万円-5万円=495万円

所得税として納める金額:495万円×20%=99万円

 

よって、控除を受けた場合の納税額は99万円です。

個人事業主の保険料の処理について

個人事業主の保険料の処理について

個人事業主が支払う保険料の中には、必要経費になるものとならないものがあります。また、例え同じ内容の保険であったとしても、事業に直接関連性があるのか、それともプライベートで利用する保険なのか否かで扱いが異なります。

個人事業主にとって、それぞれの保険料に関する処理方法を知っておくことはとても大切です。ここでは、経費になる保険料と、経費ではなく控除になる保険料の帳簿上の処理方法について解説していきます。

経費になる保険料について

保険料を経費として処理する場合、保険料をどのような期間で支払うかが仕訳方法のカギとなります。ここでは、以下の2つに関する経費の処理方法をご紹介します。

 

①    保険料を毎年支払う場合

②    複数年分を一括で支払う場合

 

一括で支払うことも多い保険料ですが、毎年分か複数年分かで処理方法が異なります。

では、各ケースの仕訳を見ていきましょう。

 

①    保険料を毎年支払う場合

1年分の保険料をまとめて支払う際、必ずしもその年の保険料のみをカバーするとは限りません。もし4月に1年分の保険料を一括で支払っても、その年カバーされる保険期間分は4月から12月までの9か月間です。

残りの3か月分の保険料は来年1月から3月までのカバーとなるため、その分の保険料を来年の経費として処理することになります。普通預金から毎月1万円の保険料を1年分12万円まとめて支払った場合は、以下のように仕訳を行います。

 

支払った際の仕訳処理

借方勘定科目

借方金額

貸方勘定科目

貸方金額

摘要

保険料

9万円

普通預金

12万円

保険料 4月~12月分

前払費用

3万円

   

保険料 翌1月~3月分

 

翌年の会計年度で行う仕訳処理

借方勘定科目

借方金額

貸方勘定科目

貸方金額

摘要

保険料

3万円

前払費用

3万円

保険料 1月~3月分

 

尚、保険料のように1年以内にサービスが提供されることが前提となっているものに対しては、「短期前払費用の特例」を活用することができます。

「短期前払費用の特例」は、支払った保険料を支払い時に全額経費にできる仕組みのことです。

毎年同じ処理を継続することで受けられる特例となっており、仕訳は以下のようになります。

 

支払った際の仕訳処理

借方勘定科目

借方金額

貸方勘定科目

貸方金額

摘要

保険料

12万円

普通預金

12万円

保険料

 

「短期前払費用の特例」は支払った全額を支払い時に経費計上できるため、翌年の会計年度で仕訳処理を行う必要はありません。

 

②    複数年分を一括で支払う場合

複数年分の保険料をまとめて支払う場合は、期間別に経費計上の処理を行います。

以下は、1月に5年分の保険料である10万円(年間2万円)を支払うケースの仕訳です。

尚、支払いは普通預金から行ったものとします。

 

支払った際の仕訳処理

借方勘定科目

借方金額

貸方勘定科目

貸方金額

摘要

保険料

2万円

普通預金

10万円

保険料 今年度分

前払費用

8万円

   

保険料 翌年度以降分

 

2年目~5年目の会計年度で行う仕訳処理

借方勘定科目

借方金額

貸方勘定科目

貸方金額

摘要

保険料

2万円

前払費用

2万円

保険料 今年度分

 

経費ではなく控除になる保険料について

保険料の中には、経費ではなく所得控除の対象となるものがあります。ここでは、生命保険料と地震保険料に関する控除の処理方法を解説していきます。

 

生命保険料

生命保険には、旧契約と新契約があります。それぞれ控除を受ける際の計算方法が異なるため、自身の生命保険がどちらに該当するかを知る必要があります。

 

旧契約…契約を結んだのが平成23年12月31日より以前であり、一般分と個人年金分の2種類がある

新契約…契約を結んだのが平成24年1月1日以降であり、一般分、個人年金分、介護医療保険分の3種類がある

 

旧契約と新契約の控除額は、以下の表を参考にしましょう。

 

旧契約の控除額

1年間に支払った保険料

控除額

25,000円以下

支払った保険料の全額分

25,000円~50,000円

支払った保険料の全額分×1/2+12,500円

50,000円~100,000円

支払った保険料の全額分×1/4+25,000円

100,000円~

一律で50,000円

 

新契約の控除額

1年間に支払った保険料

控除額

20,000円以下

支払った保険料の全額分

20,000円~40,000円

支払った保険料の全額分×1/2+10,000円

40,000円~80,000円

支払った保険料の全額分×1/4+20,000円

80,000円~

一律で40,000円

 

地震保険料

地震保険は、「地震保険料控除」の適用対象です。ただし、火災保険部分が含まれないという点には注意しましょう。もし旧長期損害保険料を支払っている場合は、「地震保険料控除」の控除を受けることが可能です。

旧長期損害保険料とは、平成19年分から廃止された「損害保険料控除」に関連する保険料を指します。以下は、地震保険料と旧長期損害保険料の控除額です。

 

地震保険料の控除額

1年間に支払った保険料

控除額

50,000円以下

支払った保険料の全額分

50,000円~

一律で50,000円

 

旧長期損害保険料の控除額

1年間に支払った保険料

控除額

10,000円以下

支払った保険料の全額分

10,000円~20,000円

支払った保険料の全額分÷2+5,000円

20,000円~

一律で15,000円

 

生命保険料と地震保険料を経費ではなく控除として処理する場合は、加入保険の内容と控除額をよく確認するようにしましょう。

個人事業主の保険料で経費にできるものまとめ

個人事業主の保険料で経費にできるものまとめ

個人事業主が支払う保険料には、さまざまなものがあります。経費として計上できるものとできないものがあるため、各保険料がどちらに該当するのかをよく確認しなければなりません。

経費として認められない保険料の場合は、確定申告の際に控除対象となる可能性があります。所得控除には、「社会保険料控除」「扶養控除」「地震保険料控除」「小規模企業共済等掛金控除」といった多岐にわたる種類があることから、各保険料に当てはまる控除を理解することが大切です。

また、経費になる保険料と、経費ではなく控除になる保険料では、処理の仕方が異なります。正しい金額で納税するためにも、支払っている保険料が経費になるか否かを判断できるようにしておきましょう。